ニュース

マインドセットを育むための行動指針

この先の10年でデザイナーに求められることはどのように変わるのか。デザインの教育において何を教えるべきか。デザイン教育の現場やデザインを学ぶ学生たちは、日々これらの問いに向き合い続けています。生成AIの進展により、従来「スキル」とされてきたものの一部は代替され、あるいは役割を変えつつあります。一方で、デザインを実践するうえでの基盤そのものが不要になるわけではありません。むしろ、変化の大きい時代だからこそ、個人の中にブレない軸をどのように築くかが重要になっていくのではないかと思います。

デザイン科学科では、4年間を通して学び身につける力として、

  • 現状を捉え、問いを設定する力
  • ビジョンを構想する力
  • 新しい体験を具体化する力
  • 美しく仕上げきる力

という4つのスキルを定めています。これらはデザインプロセスの中核をなす重要な要素です。ただし、これらは固定されたものではありません。デザインが関わる領域の拡張やAIを含む技術的変化によって、求められる内容は今後も更新されていくことが考えられます。スキルは重要であり続ける一方で、変わり続けるものでもあります。

そこで、変化の中でも一人ひとりの学生がそれぞれの中に揺るがないものを持ってほしいと思い、より長期的な視点からまとめたものが、育むマインドセットです。これを、

  • 自分を知る
  • 未知を楽しむ
  • 身体を使う
  • 他者と学ぶ

という4つの観点から整理しています。これらは抽象的な理念にとどまるものではなく、日々の行動として実践されることで初めて意味を持ちます。そのために作成したのが、「デザインのためのからだづくり」です。

行動としてのマインドセット

「デザインのためのからだづくり」は、マインドセットを具体的な行動に落とし込んだ10の指針から構成されています。いずれも特別な訓練を必要とするものではなく、日常の中で実践可能なものです。重要なのは、それらを単発の行動としてではなく、“息をするように”繰り返すことです。スポーツや音楽における基礎練習では、基本動作を日々の反復を通じて身体化していくことで、思考や判断の礎として機能するようにしていきます。デザインにおいても同様に、こうした行動の積み重ねが、未知の課題に対峙したときの反応を左右するのだと思います。何を考えるか以前に、どのように世界を見て、どのように関わるか。その基盤が「からだ」に備わっているかどうかが問われます。

カードとして持ち歩く

「デザインのためのからだづくり」は、トランプサイズのカードとして制作し、今年度の新入生に配布しました。デジタルな情報としてではなく手に取れる形にしたことには、持ち歩き、ふとしたときに見返してもらいたいという思いがあります。身体的な距離の近さが思考と実践の間の距離を縮める。そうなってくれると良いと思います。

変化の時代における基盤

生成AIをはじめとする技術の進展により、デザインのプロセスや役割は大きく変化し続けています。その中で、特定のツールや手法に依存したスキルだけでは長期的な適応は難しくなっていくことが予想されます。一方で、どのような状況においても、自分の身体を通して世界と関わり、他者と関係を築き、試行錯誤を続ける姿勢は、簡単には代替されないと信じています。「デザインのためのからだづくり」は、そうした変化の中でも機能し続ける基盤を日常の行動として育てていくための試みです。特別な才能ではなく、日々の振る舞いからデザインは形成されていくものです。その前提に立ち返ることで、これからの時代におけるデザインの学び方を改めて捉え直そうとしています。