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制服回収・リユース・リサイクルプロジェクトのイベントを開催

デザイン科学科の青木研究室・稲坂研究室・柴田研究室では、地域の学生服販売会社であるサカエヤ学生堂と協働し、制服回収・リユース・リサイクルに関するプロジェクトに取り組んでいます。役目を終えた制服を新たな価値へとつなぐ試みです。その活動の一環として、2026年3月25日に、中学・高校の卒業生を対象にしたイベントを大学キャンパス内で開催しました。

制服を“手放す”ための場をつくる

卒業とともに着る機会がなくなる制服は、多くの場合そのまま保管されたり、処分されたりします。しかし、そこには着用してきた時間や思い出が蓄積されています。本プロジェクトでは、単なる回収ではなく、「納得して手放す」経験が制服のリユース・リサイクルを進めていくうえでとても大切であると考えています。今回のイベントは、そのための最初の接点として企画されました。卒業生が制服と向き合い、次の循環へと送り出すきっかけをつくることが目的です。

最後の撮影で行為に意味を添える

当日は、大学キャンパス内での写真撮影を実施しました。プロジェクトのメンバーが制作した撮影用のフォトブースやフォトフレームを使用して、参加者は自分の制服を着用し、最後の記録として写真に残します。制服を着た最後の瞬間を写真という形で残すことで、制服を手放すという行為に、モノとして手元に残す以上の意味を添えます。

制服からバッジへ:素材としての再出発

もう一つの取り組みとして、不要になった制服の一部を使用したバッジ制作を行いました。参加者が素材を選び、加工をすることで、制服は新たに「身につけられるモノ」へと変換されます。このプロセスは、リサイクルの循環を自分の手元で完結させているとも言えます。衣服としての機能を終えた素材が、別の用途と意味を持つプロダクトへと変わる。その工程を自らの手で回しながら体験することで、循環の実感を伴った理解につながります。

なぜこれをデザインとして扱うのか

制服の回収・リユース・リサイクルは一見シンプルな取り組みですが、その背後には複数の社会的文脈が重なっています。まず、日本の服飾産業の構造があります。現在、衣料品の多くは海外生産に依存していますが、その中で学生服は国内生産を一定程度維持している領域の一つです。制服をめぐる循環を設計することは、地域に根ざした産業のあり方を再考することにもつながります。同時に、これは環境の問題でもあります。環境負荷の低減は重要なテーマとして広く共有されていますが、抽象的な知識にとどまりがちです。制服という身近な対象を通じて、資源が循環するプロセスを実感的に理解できる点に、この取り組みの特徴があります。さらに、制服特有の課題もあります。入学時に一括購入される一方で、成長期の身体変化により最適なサイズを着続けることが難しいという状況です。リユースの仕組みを整えることで、比較的安価に適切なサイズの制服を選択できる可能性が生まれます。これは単なる経済的負担の軽減にとどまらず、「良い服を着る」という服育の観点からも意味を持ちます。加えて、本プロジェクトは地域の事業者と連携して進められています。回収から再利用・再生までのプロセスをローカルで完結させることで、地域内の関係性を再編し、持続的な仕組みを構築する契機となります。

このように、制服という身近で具体的な対象を起点に、産業、環境、教育、地域といった複数のレイヤーが接続されている点に、本プロジェクトのデザインとしての面白さがあります。

これからの展開

今回回収された制服は、今後分別を行い、リユースおよびリサイクル製品としての可能性を検討していきます。そして秋頃には、参加をしてくれたご本人や街へ還元していくことを予定しています。プロジェクトの進行状況や検討の様子は、サカエヤ学生堂のSNSを通じて発信していく予定です。

本プロジェクトが掲げる「この街で着た制服を、この街へ」という言葉には、地域内での循環をデザインするという意図が込められています。回収・再利用・再生産といったプロセスを、単なる機能としてではなく、関係性の中で捉え直すこと。それが本取り組みの核にあります。今回のイベントは小さな一歩ですが、制服という身近な存在を通じて、デザインがどのように社会と関わることができるのかを具体的に示す機会としていきたいと思います。